福祉のひろば 2013年6月号

【特集】住まいも自己責任?─日常生活の営みで欠かせない居住権を考える─

日本の住宅政策は、残念ながら、憲法第25条に基づいた生活保障を支える政策からはほど遠く、市場化と金融政策(住宅ローン等の長期債務)に結びついた戦略的な政策によって進められ、他の日常生活を支える権利と同様に、生存権に欠かせない権利から自己責任へと追いやられています。特に、社会保障制度改革推進法の旗印のように進められている生活保護制度の改悪は、国民の分断の道具として使われ、社会保障制度全般を引き下げる道具としても用いられています。生活保護制度の改悪は、まさに、日常生活を営むためのさまざまな権利の侵害にほかなりません。

今号の特集では、公的住宅政策が貧困な中で、居住者の高齢化や一人暮らし等に対するハードとソフト両面からの対応が求められていながら、放置され続けている現実、建て替えによる家賃増額、バリアフリー設備の不備など、居住環境の悪化により居住者の社会参加がよりいっそう困難になっている現実を取材を通して紹介します。

災害救助法に基づいて建てられた東日本大震災の応急仮設住宅は、その後の復旧・復興の遅れや不十分さによって、最大5年延長が打ち出されました(本年3月号でも紹介)。しかし、広島県の自治体がみなし応急仮設住宅を打ち切る(その後、呉市は延長)など、震災被災者の居住権保障が奪われはじめています。特集では、阪神・淡路大震災の復興住宅に入居している障害を持つ方の事例を紹介し、災害による生活権保障のありようについても、長期的な政策や制度の見直しを求める現実を示します。

昨年1月号で「2012年 社会福祉を考える 1日本社会の貧困構造と24時間型社会」を掲載し、唐鎌直義さん(立命館大学教授)に日本の生活基盤の構造、社会保障の本来の目的などを発信していただきました。今号では、住まいということをどのようにとらえるかを話していただきました。事例とともに考察していただければ幸いです。

さて、トピックスでは、発刊1年を迎えた『真田是著作集』(全5巻)の今日的意義について、編集に関わった方やグループ学習のテキストとして取り上げている方々に集まっていただき、意見交換を行いました。また、著作集としてのフレーム(巻や章立て)を、編集責任者の石倉康次総合社会福祉研究所理事長(立命館大学教授、本誌編集人)から呈示していただきました。アベノミクスや社会保障改革推進の動きやねらいをとらえる上でも、真田是さんの論文やメッセージは貴重な示唆を残しています。

(編集主幹 黒田孝彦)

●表紙の絵

神門やす子

●カット

川本 浩

【ひろばトーク】

オッサン政治はウンザリ──全日本おばちゃん党を結成! 谷口真由美

●特集

住まいも自己責任? ──日常生活の営みで欠かせない居住権を考える

公営住宅に住む人々の住居の実態

復興はまだ終わっていない ──借り上げ住宅の契約打ち切りを許さない

住まいは国民の生活基盤。その確保は、市場に委ねず公的責任で。
──唐鎌直義さんに聞く

●トピックス

座談会 発刊1年──真田是著作集を解きほぐす
石倉康次・浜岡政好・芝田宇佐男・前田鉄雄・北垣智基

投稿 スウェーデンにおけるDV施策 山口佐和子

愛知で8/31〜9/1に開催予定──第19回社会福祉研究交流集会

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若者がつくる「福祉のひろば」Part2 着々と取材へ!

●連載

フォーラム 参議院選挙で憲法、いのち、くらしを守りましょう! 細貝大二郎

ひとつのこと─社会福祉労働と私たちの実践 職種間の連携を深め、
利用者とつくりあげた「こすもす」の味 貝塚こすもすの里

連載 小川政亮 第二部 自伝(15) 私事乍ら、そして扶養義務と世帯、
さらに就学援助2題 小川 政亮

相談室の窓から T君と「わくわくクラブ」(1) 青木 道忠

わらじ医者 早川一光の「よろず診療所日誌」 早川 一光

不思議、ふしぎ、人間のつくり(その18)育つ風景 待機児のお母さんが
たしかにここにいます! 清水 玲子

いっぽいっぽの挑戦(3 本人も気づかない力を発見) 繁澤 多美

映画案内 『夢』 吉村 英夫

現代の貧困を訪ねて 生田 武志

「貧しい人が遊技していると通報される」世の中になった
なにわ銭湯見聞録(弐) ラッキー植松

いただきます! 元気に育て! ぱりぱりサラダ すみれ保育園

ホームレスから日本を見れば ありむら潜

花咲け!男やもめ 川口モトコ

みんなのポスト/今月の本棚/福祉の動き

●グラビア

社会福祉士事務所開設10年を迎えました