福祉のひろば 2024年11月号商品コード:hiroba-202411
特集 日常を失わず、平和のうちに生きる
~第29回社会福祉研究交流集会in関東~
本誌2023年8月号のトーク「平和を創る紛争解決学・平和学」で、筆者の高部優子さんは、「平和」とは戦争がないだけでなく、あらゆる暴力がないことと同時に、平和を創る行動やしくみがあることだ、と書かれています。まさに、日々の福祉実践そのものではないでしょうか。目の前の子ども、障害のある人、お年寄りの願いや要求、困りごとに耳をかたむけ、どうすれば目の前の人のゆたかな成長や暮らしを実現できるのか、そのための福祉実践とはどんなものか、人権を守り尊重した実践ができているか、人権を侵害していないか……社会福祉にたずさわる者は、つねにそのことを考えていますし、考えなければならない仕事です。
「日常を失わず、平和のうちに生きる」をテーマとした第29回社会福祉研究交流集会を通して、ゆたかな福祉実践を守ることが平和を守ることにつながると、あらためて感じました。「人権」は条件付きで守られるものではありません。この世に生まれたすべての人の人権は平等に守られなければならず、そこになにか“条件”があってはいけないのです。そのために公的責任が不可欠であり、どちらを選ぶか、なにを優先するかと“条件”をつける必要のないゆたかな職員体制が必要です。そうした福祉実践が守られず、人権を守ることに条件をつけたり、それを「仕方がない」と納得してしまうことの積み重ねが、虐待や暴力につながり、最終的には、「相手が悪いから武力攻撃も仕方がない」という戦争の論理に近づいていってしまうのではないでしょうか。
日本社会のなかでも、人権が守られることに対して条件をつけることに疑問をもたない状況が、少しずつ広がっているように感じます。そうしたなかで、日常の福祉実践に向き合い、守り、もっとゆたかな実践がしたいと求めていくこと、地域やさまざまな人と共同しながらその価値観を広げていくことが、まさに平和を創っていく実践そのものなのだと思います。
【ひろばトーク】
ケアという人間力のある社会へ 川口 啓子
●特集● 日常を失わず、平和のうちに生きる
~第29回社会福祉研究交流集会in関東~
〈シンポジウム〉「公共」の縮小で、尊厳のある日常生活が守られるのか
河﨑 隆利
〈記念講演〉 日本国憲法と公務労働の今日的役割
――晴山一穂さんのおはなし 藤原 民人
福祉現場で起きる虐待の実態とその要因、打開の方向を考える
松下かほる
全世代にわたる貧困と格差の拡がり 竹内 賢人
地域づくり、地域組織化の基本を考える 中井貴美恵
福祉の仕事の魅力と担い手不足 安部 徹
若手職員交流企画「福祉の仕事 作戦会議!」 阿部 孝志
参加者の感想
●トピックス●
もっとグラビア
福祉現場も外国人労働者も支え合えるあり方を模索しながら
性暴力救援センター・大阪SACHICOの活動と意義 生魚かおり
石倉理事長に聞く! 「骨太方針2024」ってなんですか?
●連載●
なかまと職員と家族と、ともに築く暮らしの場
三人の息子たちのそれぞれの自律と暮らし 森 恒子
続・ヘルパー歳時記
ほんとうに困っていることはなんだろう②
WORK WORK──わくワク── ひのき工房
こだわりの詰まったお菓子をお届けします!
JОB&ACTION 全国福祉保育労働組合(44)
福祉保育労ジェンダー平等宣言 ~みんなのじんけん まもれるように~
私の履歴書 社会福祉経営全国会議(44)
太陽と風と大地の中で大きく、もっと大きく! 村井 義幸
阿修羅がゆく わたしが好きな釜ヶ崎(64) 水野阿修羅
育つ風景 地域の中に保育園があるということの意味 清水 玲子
映画案内 『墓石と決闘』 吉村 英夫
現代の貧困を訪ねて 生田 武志
沖縄の貧困地域と戦争跡を訪ねる(その1)
似らすとれーしょん道場 似顔絵まんがアート
チャーミングな投げヤリじゃ! ラッキー植松
ホームレスから日本を見れば ありむら潜
花咲け! 男やもめ 川口モトコ
みんなのポスト/福祉の動き/今月の本棚
●グラビア● ミャンマーから障害福祉の世界へ