福祉のひろば 2013年4月号
【特集】2013年 新たに職員を迎える福祉現場の今と明日のために
福祉現場の今と明日を担う人たちの採用と育成の課題は大きく変化してきています。毎年4月号では、新たに福祉現場で働く人たちへのメッセージを発信してきました。しかし、本誌読者の多くは、新たに採用される人々ではなく、迎える側の人々です。そこで今回の特集では、入職者がどのような教育や時代の影響を受け、何を背負ってきたのか、また福祉現場での採用のあり方が大きく変化しはじめているのはなぜか、等を考えます。そこには、当事者家族や地域住民等からの社会福祉事業の現場に期待する声が込められています。また、福祉現場で働く先輩たちは、そこで行われている、拘っている、担っていることを、ともに働き、さまざまな場を通して語りかけています。しかし、自分たちが体験してきたことや感動してきたこと、拘っていることを後輩に伝えるのは並大抵なことではありません。多くの現場では、この課題に向き合いながら、苦闘し続けています。
福祉現場で働こうと考えている学生たちは、他のシュウカツ(就職活動)の影響を受けています。卒業年度の前年から具体的な就職希望先を絞り始め、卒業年度の夏頃にはいくつかの内定にたどりつく状況です。福祉現場における新卒者受入れの状況を伺うと、法人や事業所のテンポやスケジュールではなく、学生のテンポやスケジュールに合わせるという転換を示唆しています。しかし、多くの事業者は、経済的にも人的にもゆとりのある状況から遠く離れています。社会福祉事業への入職希望者を奪い合うのではなく、構造的な問題と考えながら、この問題での時代の変貌としてとらえていかなければならないのでしょうか。
社会福祉法人・事業所の動きからだけでは、職員確保をめぐる事態を見ることができないこともあります。以前、石倉康次本誌編集人(立命館大学教授)が、福祉労働調査の結果、自宅から近い職場を選ぶ学生が多いことがわかり、大学進学でも同様の傾向が出ている、と指摘されていました。その背景には、住宅費や生活を支える費用捻出の問題、職場のストレスなどで家族の支えが必要なことなどがあります。同時に、家族も大企業等のリストラや転勤などで長期に働き続けることが不安定になっています。今回の特集では、移り変わる福祉現場等における人の確保や事業の継続性など、さまざまな苦闘と明日へつなげる努力もこの問題からも見てみることにしました。
(編集主幹 黒田孝彦)
●表紙の絵と写真
絵=神門やす子
●カット
川本 浩
【ひろばトーク】職場での壁は"扉"に
──悩み、学び、語り合い、ともに歩もう 大段 武子
●特集 2013年 新たに職員を迎える
福祉現場の今と明日のために
私たちの迎え入れ方──職員は福祉会の「財産」 光永 了円
福祉現場ではどのような世代が入職してきているのか 向 幸子
学生の熱意に向き合い、職場も元気になる採用活動を 山本 政幸
想いと願いを持つ社会福祉専門職が育つ環境づくり 金田 喜弘
働きつづけられる職場を一緒につくりましょう 仲野 智
働きはじめたみなさんへ 社会福祉の現場でともに成長を 中田 進
●トピックス
福祉人材確保の動向〈大阪〉 島村 一弘
──国・自治体の責任で抜本的な人材不足対策を
「雇用の安定」につながるのか ?畑 芳和
──労働契約法「改正」が福祉現場に及ぼす影響
八尾市知的障害児・者のくらし実態調査 田槇 公典
「第4回 ひろばセミナー」を開催しました
●連載
フォーラム 福井 典子
こぞって「身をさらす」活動に打って出よう!
ひとつのこと─社会福祉労働と私たちの実践 すみれ共同作業所
楽しむことの大切さを忘れずに──郊外レクレーション
連載 小川政亮 第二部 自伝(13) 小川 政亮
公的責任の転嫁を許さず──藤木訴訟、そして私事だが
相談室の窓から 青木 道忠
自分の力を発揮する わらじ医者 早川一光の「よろず診療所日誌」 早川 一光
不思議、ふしぎ、人間のつくり(その16)育つ風景 学童保育のいま 清水 玲子
いっぽいっぽの挑戦【新連載】 繁澤 多美
「生きる権利」を支える場として
映画案内 『ある海辺の詩人──小さなヴェニスで』 吉村 英夫
現代の貧困を訪ねて 92歳の野宿者 生田 武志
いただきます!【新連載】 小山みちる
ほかほかほっこり 肉まんホームレスから日本を見れば ありむら潜
花咲け!男やもめ 川口モトコ
みんなのポスト/今月の本棚/福祉の動き
●グラビア 「はびきの園」の仲間の活動