福祉のひろば 2013年1月号
【特集】憲法とともに福祉現場で生きる
今号の発刊が総選挙投票日後のため、編集日程上、選挙の結果がわからない中での文章であることを最初にお断りします。
2012年を振り返るときに、社会保障・税一体改革の関連法の成立・施行を抜きに語れません。2009年の総選挙で、当時最大野党だった民主党は、構造改革に苦しむ国民の切望につけ込み、構造改革の転換を掲げ、それを国民への公約として政権をとりました。しかし、その公約も束の間のこと、民主党は、国民の力で政権がとれたことなど忘却の彼方に葬り、財界とアメリカの顔を伺う仮面にすり替えました。自民党・公明党と一緒に、財界が要求する構造改革の集大成に邁進し、消費税増税と社会保障を消費税の鉄枠に押し込める公約違反を、国民に信を問わずに強行を図ったのです。
旧来の自民党型ではたたかえない、と出現した政党の存在は、構造改革路線に苦しむ国民のまなざしをそらすものなのか、権力の一時退避機能に見えて仕方がありません。サルコジ大統領を破り、反グローバル資本化をめざすフランス国民の意志、原発再稼働を阻止したイタリアの国民投票、そして3年前の日本の再来を恐れる日米の権力者たちの逃げ道をつくるためなのか、巨大マスコミ産業を使って国政転換を回避させようとしています。
構造改革の10年間、医療・介護・年金・障害者福祉・保育・公的扶助等々、国民に利用抑制や規制、負担増を強いて、社会保障破壊が続けられてきました。しかし、私たちは一つひとつの攻撃をはね返す運動を草の根から広げ、社会福祉分野でも、より深い学習と共同、共闘の輪が広がり、実践の輪も広げてきました。その輪は、社会福祉分野を超えた広がりとなり、東北大震災への支援活動や反原発の取り組み、反貧困ネットの運動などともつながっていったのです。
社会福祉に背を向けた族が、財界が掲げる要求(圧力)に10年越しで取り組んできたように、私たちもこの10年、大きな福祉実践の輪とたたかいの輪を広げ、強めてきたことを忘れてはなりません。それは、社会福祉現場で日々向き合うその人らしさ、日本国民としての尊厳を保障すると謳う憲法の実現と実践こそ、人々の願いそのものであり、拘りながら、苦悩しながら、生き続ける私たちそのものの存在があるからです。
今号は、生田武志さん、杉山隆一さん、石川康宏さんという「福祉のひろば」ならではの方々が、私たちの人として生きる権利をどう発揮するかを軸に、2012年の振り返りと2013年の展望を語り合いました。また、今年も引き続き全国の社会福祉現場で根を張り、生き続ける? 反骨?を交流することにしました。
決して侮れない情勢かもしれませんが、ロマンと展望を見失うことなく、明日の社会福祉をめざして発信し続けたい。
(編集主幹 黒田孝彦)
福祉のひろば2013年1月号
●表紙の絵と写真
絵=神門やす子
写真=下野祇園(下野祇園)
●カット
川本 浩
【ひろばトーク】
核と人類は共存できない
──「生命を生みだす母親は 生命を育て 生命を守ることをのぞみます」
植田 晃子
●特集 2013年 憲法とともに福祉現場で生きる
2013年スタート! 福祉現場で働く若手職員の意気込みあふれるメッセージ
山口 碧・稲葉 祐希・小寺 友子・西田 友美
竹村 渉・飯塚 智美・大塚 佳奈・佐治 宏実
秋田 早希・大谷 一平・植月 健司・西川 剛
〈座談会〉2012年を振り返り、2013年に向けて
生田 武志・杉山 隆一・石川 康宏
福田 志朗・植田美奈子・井上 友民
●トピックス
新年にあたって 「福祉のひろば」編集人 石倉 康次
総合社会福祉研究所 2013年の主な予定
●連載
フォーラム がんばれ! 高齢者たち 上坪 陽
ひとつのこと─社会福祉労働と私たちの実践
ピンポーンで始まる安心 城東老人ホーム
連載 小川政亮 第二部 自伝(10) 牧野訴訟
――老齢福祉年金夫婦受給制限 小川 政亮
相談室の窓から 否定・禁止・強制ではなく 青木 道忠
わらじ医者 早川一光の「よろず診療所日誌」
不思議、ふしぎ、人間のつくり(その13) 早川 一光
育つ風景 今、福島の子どもたちとおとなたちは 清水 玲子
穂波のアメリカ子育て事情
WIC(低所得者層向け食料配給制度)を体験して 吉田 穂波
映画案内 『拝啓、愛しています』 吉村 英夫
現代の貧困を訪ねて
われわれは衆議院選でどのような社会を選ぶのか 生田 武志
施設訪問ボランティア この街から こーちゃんとほっこりシスターズ 草田満喜子
私の研究ノート 就学猶予・免除障害者の教育権保障 河合 隆平
ホームレスから日本を見れば ありむら潜
花咲け!男やもめ 川口モトコ
みんなのポスト/今月の本棚/しりとりであそぼう!"おかしい"と言うことが大切
